ブローカーズ・キーパー(悪魔のリドル/兎晴)


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3.走り鳰は観察する





 空気を振動させる爆発音と共に、トラックが反り返るのが見えた。
 その下をバイクが映画のスタントのような身のこなしでくぐり抜け、そのまま走っていく。兎角と晴だった。
「ひょえー、すごいっスねぇ」
 走り鳰は近くの建物の屋上から一部始終を見ていた。ブレザーの制服が焦げた匂いのする風にはためく。
 軍と警察が相手ではすぐに死ぬだろうと思ったが、まさか兎角がここまで奮闘するとは意外だった。これぞ背水の陣というやつだろうか。鳰は拍手でもしてやりたくなった。
「およ?」
 突如、重々しいエンジン音が聞こえてきて、下の道路に巨大な車体が現れた。兎角たちの向かった方角へと走り去っていく。
「あちゃー。軍の奴ら、いよいよブチ切れちゃったかぁ」
 兎角たちのバイクと比べると、まさしく象と蟻という例えがふさわしい。このままではおそらく蜂の巣か、さもなければ踏みつぶされてサンドイッチの具だ。
「しょーがない。行くしかないっスね」
 手にした端末で「車を用意しろ」と連絡し、鳰は屋上を後にした。



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