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窓の向こうの秘密





 ――さて、もうそろそろかな……。
 木崎智恵(きのさき ともえ)は暗い窓の外に目を凝らしながら、落ち着きなく貧乏揺すりしていた。窓辺にわざわざ背の高い椅子を置いてそこに座っている格好だ。
 視線の先には、明かりのついた別の窓、つまり隣接する民家の二階の部屋があった。智恵のいるアパートの方が若干背が高いので見下ろす形になり、ほとんど中の様子は丸見えだった。かつ向こうからは見上げられない限り気づかれることはない。
 その部屋には一人の女の子がいた。背の低いテーブルに突っ伏すようにして、どうやら学校で出された宿題を片づけているようだった。ぬいぐるみなどが飾られていることから、そこが彼女の一人部屋であることがわかる。
 智恵は彼女の名前を知っている。織部理亜(おりべ りあ)。確か今年上級生になったばかりの小学生だ。女の智恵から見ても彼女は目鼻立ちがしっかりしていて可愛らしい顔立ちをしていた。
 そんな彼女を、窓越しにじっと見つめている。一瞬一秒も見逃さないつもりだった。
「……あっ」
 思わず声を上げてしまう。向こうの様子が変わった。理亜がペンを放り出したかと思うと、履いているフレアスカートをめくり上げたのだ。
 ほとんど剥き出しになったショーツにそのまま手を入れる。腕が妖しく小刻みに動き出したのを見れば、何をしているのかは一目瞭然だった。
 理亜はオナニーを始めたのだ。
 じっと食い入るように智恵はそれを覗く。理亜が恍惚とした表情を浮かべているのまではっきりわかった。
 やがて空いている方の手で、服の上から自分の胸をいじり始める。小学生にしては彼女の胸は大きい方だ。指を動かせば圧迫によって形を変えるのまで見えてきそうなほどだった。
「理亜ちゃん……」
 智恵の息が窓を白く染める。きっと乱れてきているはずの理亜の吐息は、ここからでは聞こえない。だから智恵はいつも頭の中でその淫らな響きを想像し、再生していた。
『あっ、んっ……くう……はぁっ』
 その熱さ、そこに含まれたミルクのような籠もった香りまで伝わってくるようだ。
「はぁっ……理亜、ちゃん……っ」
 智恵もすでに湿り気を帯びているであろう自らのショーツの中に、指を忍ばせる。


 まだ大学に向かうには一時間ほど早かったが、智恵は家を出ることにした。上がったばかりの朝日が眩しく降り注いでいるものの、外の空気はほんのりと肌寒い。智恵も膝上ショートパンツの下にしっかり黒いタイツを履き込んでいた。
 まだ歩き出さずにその場で待っていると、「いってきまーす」という元気な声が聞こえてきた。隣の家の玄関から、理亜が姿を現したところだった。
「あっ、智恵ちゃんじゃん。おはよー!」
 彼女はこちらに気づいて駆け寄ってきた。二人はとっくに面識があるのだ。
「最近よく家出る時間被るねぇ。大学生も大変そう」
 子犬のような人なつっこい笑顔を見せる彼女。もちろん家を出るタイミングを彼女に合わせて計っていることは智恵だけの秘密だった。
「おはよ、理亜ちゃん。朝早いし寒いのに元気だねぇ」
「そりゃあ、あたしはしっかり自己管理できてるからね。もう子供じゃないから。一人で起きられるし」
 自慢げな言い方はやはり子供のそれっぽかったが、指摘はしないでおく。この時期の子は背伸びをしたい年頃なのだ。
 智恵はさりげなく彼女に目を通す。今日は冷えているからかピンクの可愛い上着を着ている。そのせいで発育のいい胸が隠れてしまっているのが残念だった。小柄な小学生のくせにと、智恵は密かに羨んでいる部分があった。
「……じゃあ、理亜ちゃん。途中まで一緒に行こっか」
「智恵ちゃんがどうしてもっていうなら、しょうがないなぁ」
「はいはい、よろしくね」
 隣立って二人は歩き出す。今日学校で何があるか尋ねると、彼女は嬉々として楽しみな授業のことを話し出した。
 ――こんな純真そうな子も、オナニー、してるんだ……。
 しかもそのことを知っているのは、おそらく自分だけ。
 ぞくっと、背筋が震えるのがわかった。


 一人暮らしのためにアパートへ引っ越しを終えて。住民に挨拶も終えた智恵はせっかくだからと隣の住宅のインターホンも鳴らした。そこで出てきたのが、理亜だったのである。彼女の両親は共働きでその時家には彼女しかいなかった。
 持っていったお菓子に大層喜んでくれた彼女と楽しく話したことから、面識ができた。とは言っても一緒に遊んだりお互いの家に招いたりしたことはなく、たまにあったら親しげに話す程度の仲だ。
 素直でちょっとませたいい子。最初はそれだけの印象だった。
 だが、ある夜彼女が自室でオナニーに耽っているのを目撃してから、見る目が変わってしまった。それを覗き見るのが智恵の日々の楽しみとなり、彼女はもはや欲望の対象となってしまっていた。
「智恵さ、最近何か綺麗になった?」
 大学の混み合った学食にて、同席した友人が突如そんなことを言ってくる。
「えっ、何いきなり。そんなことないと思うけど」
「いや、そんなことあるって。何かこう血色がよくなってきてるっていうかさ……」
 あ、もしかして彼氏でも出来た? と尋ねられ、智恵は苦笑して首を振った。
「えー? ウソついてないよね。出来たらちゃんと私にも報告してよ」
「いないいない。神に誓ってほんとだよ」
「そっかぁ。いやぁ、でも欲しいよねやっぱり。夏休みまでには何とかゲットしたいなぁ」
 彼女が近くのテーブルで馬鹿笑いしている男子一同を物欲しげな顔で見ていたので、頑張れー、と心のこもらないエールを送っておいた。
 おそらくこういうのが普通なのだろうな、と内心智恵は思う。
 ――もし私が、隣に住む小学生の女の子のオナニーを覗くのに夢中になっていると言ったら、彼女は一体どんな反応をするだろう。
 こういったことは絶対に誰にも言えないからこそ、癖になるものだと自覚する。他人の、それも無垢な女の子の秘密を知ってしまったということ。そして同性の小さな女の子に、自分が欲情してしまっているという背徳感。
 それは絶妙に甘く、毒のある蜜の味がするのだ。


 一日の講義を受け終わり、帰り道の横断歩道で信号待ちをしていると肩を叩かれた。びっくりして振り返ってみれば、悪戯っぽい顔で笑う理亜が立っていた。学校帰りなのか、赤いランドセルを背負っている。
「サプラーイズ。智恵ちゃんびっくりした?」
「ああ、理亜ちゃん。もう学校終わったの?」
「まあねぇ。智恵ちゃんも? 大学生なのに小学生と同じ時間に帰れるのってずるくない?」
「ずるいのが大学生の特権だからね」
 何それ、と理亜は口を尖らせる。そして「じゃあ私も将来は大学生になってずるしまくってやる」と宣言した。規模の小さな夢に智恵は吹き出してしまう。
「あれ、理亜ちゃん手袋は?」
 ふと気づいて聞いてみる。理亜の手はほんのりと赤くなっていて冷たそうだった。
「ああ、何かお母さんが忘れてたみたいで。まあそんなに寒くないから平気だよ」
「ふーん……」
 そこで思いついた智恵は、少し考えてから彼女の両手を掴んで自分の手で包み込むようにしてみた。さすがに理亜も驚いたみたいだった。
「わっ、ちょっと智恵ちゃん?」
「サプラーイズ、なんて。理亜ちゃんの手寒そうだったから、これであったまるかもと思ってさ」
 半分本当、半分口実だった。自分が彼女の手に触りたかっただけだ。握り込みながら、さりげなく指の間をくすぐってみる。こそばゆそうに彼女はぴくんと反応した。
「んっ、智恵ちゃん、ちょっとくすぐったいよぉ」
「そう? でもこうした方があったかくなれそうじゃない?」
 言いつつ擦り合わせてみたりする。
 触れてみてわかったが、理亜の手は本当に小さかった。指も短く、爪もまん丸としていて可愛いらしい。
 ――こんな手で、この子は自分を慰めているんだ……。
 情欲が胸の内側で疼く。
「……あっ、智恵ちゃん信号青になったよ。ほら、早く渡らないと!」
 理亜が素早く手を引っ込めて駆け出していってしまう。名残惜しさを覚えながらも、智恵はその後を追いかけた。


 その夜、智恵は自室で何となしにテレビを眺めて過ごしていた。八時の番組が始まった頃になって、ふと隣の家の二階に明かりが灯った。理亜が自分の部屋に戻ってきたのだ。智恵ははやる気持ちを抑え、いつものように椅子を持ってきて窓辺に座る。
 彼女は大抵宿題中や漫画を読んでいるときに、思い出したように始めることが多い。しかし今日はすぐに履いているズボンを脱いでショーツ姿になったので目を見張った。鼓動が強く脈打つ。
 床に座り込んだ理亜は膝を立てたまま足を広げ、ショーツの上からゆっくり指を這わせ出した。こちら側を向いているのでその様子がよく見える。恥を凌ぐように目をぎゅっと閉じているので、智恵が覗いていることには気づきそうになかった。
「はぁっ……理亜ちゃん……」
 智恵もショーツ姿になる。先の方を指の腹で擦れば、既に水気を感じてしまう。
 理亜は服の上から自分の胸をこねていた。時々乳首らしきところを指先でくるくるなぞる仕草に、智恵の興奮も高まっていく。
「あれ……?」
 不意に彼女が机の上からペンを取り、それを股間に押し当て始めた。先でぐりぐりとして、その後は側面を上下に素早く往復させる。同時に胸の愛撫も荒々しくなった。
「理亜ちゃん……悪い子だね……」
 もう我慢できずに智恵はショーツの中に手を突っ込む。茂った陰りを越えてソコに到達すれば、既にふやけてしまうほど濡れそぼっているのがわかった。
「んっ……くっ……」
 吐息が湿っぽく漏れる。理亜の方も声を抑えられないのか口がほとんど開きっぱなしになっていた。ほとんど欲求のままに自分の体を貪っているようだ。
 よく見れば、彼女の唇が動いているようだった。目を凝らすと、小さく何かを言っているみたいだ。しかしここからではほとんど読みとることが出来ない。
 ――もしかして、好きな人の名前とか……?
 そう思った瞬間頭の芯がかっと熱くなるのを感じた。欲情とは違う、嫉妬の感情が沸き上がりはじめているのに気づいて、智恵は戸惑う。
 理亜の方を見てぎょっとした。彼女はお尻をこちらに突き出すような格好で横たわっていた。手は既にショーツに中に入り込んでいる。足の間の布地が微かに蠢いているのがわかった。そんな扇情的なポーズを見せつけられて、智恵の気分は高まっていく。
 掬った潤みを、尖りきったクリトリスにまぶして指先で引っかける。強い刺激に下肢がとろけそうになった。
 理亜の声が聞こえたような気がした。それは智恵を呼んでいる。甘く誘うように、ただ智恵だけを求めている。
『智恵ちゃん……っ! 気持ちいいよぉ……。もっと、もっとぉ……っ!』
「はぁっ……理亜ちゃん……っ」
 中指と人差し指を中に差し込んだ。そのまま深くまで抉る。くっと強く指を持ち上げれば、めまいがするほどの快楽が襲ってきた。
「理亜ちゃんっ……いっちゃうっ。理亜ちゃ……っ!」
 全身ががくがくと痙攣して、思考が真っ白な波にさらわれていく。
 そんな中でも智恵は、ひたすらに理亜のことだけを考え続けていた。


 翌日、大学での講義はまったく身が入らなかった。ぼんやりしていて話を聞き逃し、突っ伏していたらそのまま眠ってしまうなどと散々な状況で、同席していた友人にノートを写させてもらう始末だ。
 原因はわかっていた。理亜だ。
 ふと油断したらすぐに昨日の、自分のアソコを夢中でまさぐっている彼女の姿が思い浮かんでしまう。そのたびに心臓が痛いほど締め付けられ、平常心ではいられなくなるのだ。
 ――理亜ちゃん……。
 どうにか無事に講義も片づけて、智恵は帰り道を辿る。その最中でもやはり理亜のことを思っていた。
 いつも覗き見ていたが、あんなに激しくオナニーする彼女を見るのは初めてだった。ペンを使い、更にはお尻を突き出してアソコをいじって……。思い出すだけで軽く背筋が痺れが走る。
 ――やっぱり、好きな子が出来たのかな……。
 その子への想いを膨らませて、彼女は自分を慰めていたのだろうか。
 そう思うと、焦燥感にも似たどんよりと黒い感情が胸の中を焦がす。嫉妬している、と気づくとそんな自分がどうしようもなく可笑しかった。まさか自分は隣の小学生に、心を乱されているとでも言うのか。
「……あっ」
 一人首を振るっていると、昨日と同じ横断歩道で信号待ちをしている、ランドセルを背負った小さな背中を見つけた。
「理亜ちゃん」
 何を思うより先に声を掛けていた。一瞬彼女はびくりと竦む。
「なぁんだ、智恵ちゃんかぁ。知らない人が声掛けてきたのかと思った」
 振り向いた彼女は冗談めいた口調でそう言う。平常と変わらない人懐っこい笑顔を浮かべて。
「知らない人じゃなくてよかったね。理亜ちゃんは今帰り?」
「うん、どこかの大学生さんと同じで、今帰りだよ」
「そんな暇そうな大学生、見たことないなぁ」
 笑い合う。しかし智恵の笑みはどうしてもぎこちないものになってしまう。昨日の彼女を意識せずにはいられず、今目の前に張本人が立っているという事実で、智恵は体の中に熱が溜まっていくのを感じていた。
「じゃあ智恵ちゃん、ばいばーい」
 途中まで一緒に帰り、家の玄関へと向かう理亜を見送る。未だにもやもやとした気持ちを抱え込んだまま、智恵も自分のアパートへと足を向けた。
「……ん? あれ、何で?」
 慌てたような声が聞こえてきたので顔を向けると、玄関の扉の前で理亜が上着のポケットやらランドセルやらを漁っているのが見えた。
「理亜ちゃん、どうかしたの?」
 声を掛ける。彼女は眉尻を下げて素直な困った顔をしていた。
「……家の鍵、中に忘れちゃったみたい。どうしよう、お父さんもお母さんも帰ってくるの夜なのに……」
 しゃがみこんだままがっくりとうなだれる理亜。この時期に夜まで外で待っているのはかなり厳しいものがあるだろう。
 智恵ははっとなる。閃いてしまったのだ。まったく何というタイミングだろう。
 心は不穏に胸を叩いて危険信号を送っている。だが智恵はそれに気づかない振りをして口を開いた。
「じゃあ、私の家に来る……?」


「智恵ちゃんの家に入るのって、何気に初めてだよね」
 照れくさそうな笑みを浮かべて理亜は智恵の部屋の玄関をくぐる。後から入った智恵は閉めた扉に鍵を掛ける。その音が、ひどく重く感じられた。
「お邪魔しまーす。わあっ、結構広いね。いいお部屋じゃん」
 リビングに通すと理亜は感心の声を上げた。少し広めのその部屋は智恵も気に入っているポイントで、それを最大限にいかすためテーブルにテレビなど家具は必要最低限だ。開け放たれた引き戸の向こうは寝室でベッドと本棚、クローゼットなどがある。
「……今ジュース持ってくるから。くつろいでていいよ、理亜ちゃん」
 テーブルの前の座椅子を彼女に勧めてから、智恵はキッチンへと向かった。冷蔵庫から取り出したオレンジジュースをコップに注ぎつつ、横目でちらちらと理亜を観察する。落ち着かないようで周りを何度も見渡している。慣れない環境に戸惑う小動物のようだ。
 そんな彼女と、隣にある大きな窓が重なっていた。彼女が愛欲に浸る様を覗いていた、あの窓だ。
 心臓の音が加速していくのがわかった。
「……おまたせ、理亜ちゃん」
 すっと彼女の横に膝をついてオレンジジュースの入ったコップを差し出す。
「あっ、ありがと智恵ちゃん。おもてなし悪いねぇ」
 理亜は受け取ったジュースに口をつけた。細く小さな喉がこくこくと小刻みに動くのが見える。智恵はそれに見入っていた。
「……ねえ、理亜ちゃん」
「ん? どしたの?」
 静かに呼びかける。軽くめまいがしていた。まるで自分を少し遠くから眺めているような感覚。
 だめだ、と自分を制止しようとする。だが抵抗空しく、智恵の口は勝手に言葉を紡ぎ始める。
「……よく自分の部屋でさ、オナニー、してるよね? 私、知ってるんだよ……?」
 言ってしまった。智恵を見る理亜の顔が驚愕を描いて、固まる。智恵は彼女の肩に手を置いて囁き続けた。
「ここからね、理亜ちゃんの部屋よく見えるんだ……。ほら、あそこの窓、わかる? 自分の下着に手を入れて、アソコいじってるの……見ちゃったんだ、私」
「えっ、あ、う……」
 理亜は舌が絡まって上手く話せないみたいだった。心の底から困惑し絶望する彼女の顔に、智恵の欲求は更に煽られる。
「このことさ……お父さんとお母さんに喋ったらどうなるかな。友達が知ったら理亜ちゃんのこと、何て思うだろうね」
「やだ! だめ、言わないで……!」
 弱々しい声で彼女はようやくそう言った。
「じゃあここで、してみてくれる……?」
「え、えっ? な、何を……」
「わかるよね? オナニーだよ」
自分の口角がいやらしく持ち上がるのを、智恵は他人事のように感じた。


「……ほら、もっと足開いて。よく見せてよ」
 智恵は立てた理亜の膝に手を掛け、左右に引く。彼女はされるがままだった。
 前とは色違いのフレアスカートの下は、驚いたことに素足だった。ほっそりとした太ももは目を見張るほど白く、外気に当てられた名残で少し赤らんでいる。今彼女は座椅子の背もたれに身を預け、むき出しになったショーツを指でぎこちなく擦り上げていた。正面から、智恵がそれを覗き込んでいる形だ。
 しかしやはり人の手前であるからかあまり乗り気でない彼女の指使いに、智恵はそろそろ焦れてきていた。
「理亜ちゃん、手伝ってあげようか」
「えっ……」
 押し黙っていた理亜が顔を上げる。智恵は彼女の着ている長袖のTシャツを掴む。
「万歳してくれる? ほら、早く」
 言う通りにして手を挙げた彼女から、服を抜き取った。すると花柄の模様があしらわれたエメラルドグリーンの可愛いブラが露わになる。ショーツとお揃いらしい。
「へえ。理亜ちゃん、やっぱりもうブラしてるんだ……」
 する時も彼女は服を着たままだったので、こうやって目の当たりにするのは初めてだった。小学生とは思えないボリュームがある。軽く手に乗せるようにすると、ぴくんと彼女の体が揺れた。
「んっ……」
 少しとろみのある吐息。
 ――感じてる……?
 試しにそっと肌に両手を滑らせてみる。絹のような柔らかな感触が返ってきた。
「はぁっ、冷たっ……」
 理亜が身をよじる。避けようとしているというよりは、智恵の手を受け入れているようにも思えた。
 それならば。
「じゃあ、ちょっとあっついの、触るよ?」
「ひゃあっ!?」
 顔を近づけ、そのまま彼女の首筋に舌で触れた。ちゅっ、ちゅると音を立てながら首の側面に吸い付き、舌で肩口まで下る。それからブラを飛び越えて、お腹へ。脂肪という言葉を知らないそこに、再び幾つか口をつけた。
「あっ、ん、んんっ……智恵ちゃ、くすぐったい……っ」
 見上げると理亜の頬が薄く色づいてきているようだった。間違いない、彼女は感じている。
 ここぞとばかりに、ブラのフロントについたホックを外した。すとんとブラが落ち、手のひらで包めるほどの膨らみがさらけ出された。
 思わず生唾を呑み込んでしまう。自分にも付いているものなのに、どうしてこうも魅力的に見えるのだろう。
 我慢できずに両手でぐっと握り込む。
「痛いっ……」
「あっ、ごめん……。もうちょっと優しくするね」
 今度は綿毛を扱うように、そっと触れる。想像以上の柔らかさ。意識がくらくらしてきた。
 ――ここは……。
 胸の先で色づいた若い蕾を、指先でつついた。
「あっ、んっ!」
 理亜が小さく跳ねた。既にそこは固く張りつめていて敏感になっていたのだ。智恵は指の腹でコリコリと乳首を転がしながら言う。
「ほら、理亜ちゃん。お手々もちゃんと動かさないと」
「う、うん……」
 ショーツの上で止まっていた理亜の手が動き出す。その途端、ぐちゅり、と湿った音がした。ショーツの先が縦に染みを作っている。理亜の顔が一気に赤くなった。
「あれ。結構濡れやすいんだ、理亜ちゃんって」
「こ、これは……」
「じゃあパンツの上からだけじゃ、もう物足りないよね……?」
 智恵は理亜の手を掴み、彼女自身のショーツの中に潜り込ませてやる。指が擦れたのか、またちゅっと水音が鳴った。
「はぁっ、やだこんな……」
「部屋でしてるのと同じようにしてみて。こっちは、私がしてあげる」
 そう言って口に乳首を含んだ。理亜が大きく震える。
「あんっ、あっ、んうぅ……っ」
 理亜が指を荒々しく使い始めたようだ。断続的な淫音が聞こえてくる。激しさはとどまることを知らずに増していく。
「智恵ちゃんっ、智恵ちゃぁっ……!」
 舌で乳首を嬲りながら、自分の名が呼ばれるのを聞いていた。ずっと頭の中で思い描いていただけのもの。まだ夢でも見ている気分だった。
 ――理亜ちゃんが今、私の目の前でオナニーしてる……。
 窓という境界線を、二人はとっくに越えてしまっていた。
「あっ、あぁっ、だめっ……!」
 理亜の声の調子が変わる。かと思うと足から痙攣し始め、やがて背を仰け反らせるように持ち上げてつま先をぴんと張った。
「智恵ちゃっ、んあっ、あっ、ん、んぐっ……!」
 すぐに硬直は解け、彼女は力の抜けた格好で息を切らせていた。どうやら軽く達してしまったようだ。
 だがそんな彼女の姿を見て尚、智恵の内の炎はくすぶっていた。とっくの昔から自分は、見るだけでは満足できなかったのだと自覚する。
 彼女の耳元で囁いた。
「理亜ちゃん、今度はベッド行こうか」


 脱力した理亜の体を支えてやって、寝室のベッドへと導いた。
「うつ伏せになって、お尻を少し浮かせてみて」
 要求すると、まだ頭がぼんやりしているのか理亜は素直に従ってくれる。
 女豹にも似たポーズの彼女の後ろに回り込む。突き出されたお尻を正面から捉えた。ショーツの一部が楕円形に変色しているのがよく拝める。情欲を惹く眺めだった。
「や、やだ、これもうやめようよ……」
「だめだよ。ほら、パンツ、脱がすからじっとして」
 有無を言わさずに智恵は理亜のショーツに手を掛け下ろしていく。
 小ぶりで形のいいお尻が現れ、その次に亀裂というには幼すぎる割れ目が出てくる。きらきらと光沢を放つほど潤っており、ずらしたショーツとの間に銀色の糸を引かせていた。その光景に思わず息を呑んでしまう。
「うわっ、すごい綺麗……」
「う、ううっ……」
 理亜のくぐもった声が聞こえる。きっと羞恥に悶えているのだろう。智恵の悪戯心に火がついた。
 割れ目左右の肉の盛り上がりに指を掛け、ゆっくり開いてやる。ぬちゃっ、と粘液が音を立てるのまで聞こえた。
「あっ、んっ、だめ智恵ちゃ……っ!」
「理亜ちゃんのここ、中までピンク色なんだね……」
 わざとらしく近づけた鼻を鳴らす。こもった独特の臭気。シャワーも浴びていないので当然だ。
「おしっこの臭いしてるよ、理亜ちゃん。こんなことされるの、初めてだもんね」
「も、もうやだぁ……やめてよぉ……っ」
「そんなこと言うの? おしおきしちゃうよ?」
「あぐっ……!?」
 開いたままの秘裂に舌を這わせた。理亜の背中が大きく震え上がる。まだ陰りの兆しもないその場所には、強すぎる刺激のようだ。
「うあっ、だめぇっ……汚いぃ……!」
 じたばたともがく彼女を無視して舌を使う。浅い襞の内側に溜まり込んだ蜜を掻き出せば、しょっぱいような味わいが口へと広がっていった。それを更に求めて、粘液を吐き出す秘口に直接唇をつけて吸い出す。
「んんっ! はぁっ……何、これぇ……っ!」
 自分の愛撫によって、理亜が快楽に溺れる姿を剥き出しにしている。こんなことが、あっていいのだろうか。
 ――もう引き返すことなんてできない……。
 その想いが智恵を尚更大胆にさせる。
「ひっぐっ……!」
 理亜が悶絶した。割れ目の上、窄んだ菊の花を智恵の舌が捉えたのだ。
「智恵ちゃっ……そこお尻の……っ!」
 舌先でくすぐるたびにきゅっきゅっと収縮をするその器官は不思議なものだった。ついには周りを撫でるだけで飽きたらず、智恵はそこに細めた舌を侵入させてしまう。
「ああっ……!」
 理亜がシーツを強く握りしめるのがわかった。羞恥、未知、そして悦楽。感情がごちゃまぜになって今彼女に襲いかかっているのだろう。早く楽にしてあげなければならない。
 智恵は指で固くなっているであろうクリトリスを探り当てると、包んでいる皮ごとこねくり回した。
「あっ、ぐぅっ、あがっ……! 死ぬっ、死んじゃうぅ……っ!」
 獣のように理亜は喘ぎ、やがて目を見開いたまま背筋をぐっと仰け反らせた。同時に智恵にまでその突き抜けた快感の波が襲いかかる。
 理亜の震えは長い間治まらなかった。ようやく波が途切れると彼女はへたりこんだまま荒く息を吐いていた。
 智恵も力を失ってベッドの上に倒れ込む。心地よい気だるさを感じていた。
 ふとリビングの方に顔を向けると、脱ぎ散らかった理亜の衣服のポケットから、何かが見えていた。
「あれ……?」
 鍵だ。おそらく彼女の家のだろう。
 でも彼女は確か忘れたと言っていたはずで、ポケットにあったならすぐに気づきそうなものだった。
「あちゃ、ばれちゃったかな。忘れたふりしてたの」
 いつの間にか理亜が体を起こし、じっとこちらを見下ろしていた。先ほどまでの余裕のない表情が一転し、不敵とまで言える笑みを浮かべている。
「理亜、ちゃん……?」
「智恵ちゃんが覗いてたの、私知ってたよ? だって見えるようにわざとやってたんだもん」
 そう言って彼女は不意に智恵の唇を塞いできた。
「んむっ!?」
 入り込んできた短い舌が智恵の口の中を舐っていく。掻き回される思考の中で、智恵はようやく気が付いた。
 ――あの時智恵ちゃんは、私の名前を呼んでたんだ……。
 きっと何もかも承知の上で今、彼女はこの場所にいるのだろう。
 智恵の唾液で汚れた自らの唇を、理亜がぺろりと舐める。そこに純真で無邪気だった彼女はもういなかった。
「それじゃあ次は、智恵ちゃんの番ね……?」
 理亜の手が智恵の服に掛かる。何もわからなくなった智恵はただ、彼女に身を委ねるしかなかった。



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