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姫君は手のひらで踊る





 鼓動が、いつになくどくどくと騒いでいた。気分が高まっているのが自分でもはっきりわかる。
 しかしライラは、あくまで悠々とした態度を装っていた。着ているドレスの裾を持ち上げ、城の廊下を歩いていく。しかしその足取りは無意識のうちにいつもより早まっていた。
 彼女がこの城に着いたと耳にしたのはつい先ほどのことだ。本来なら専用の講師による語学の個人授業の時間だが、わざわざ中断させてまでライラは出歩いているのだ。
 とりあえず一目でも彼女に、会っておきたかった。
「ライラ姫様、こんにちは」
「ごきげんよう」
 すれ違う甲冑を着た兵士や使用人たちには優雅に見えるよう振る舞った。彼らには、十三歳のライラが子供ながらにしっかりした佇まいに見えているのだろうか。視線には微かな畏敬の念が感じ取れる。王族の顔を気取るのも肩が凝るわ、とライラ自身は内心面倒に思っているのだが。
 長い廊下の先、T字路の突き当たりを貫禄のある人たちが歩いていくのが見えた。おそらくこれから会議が始まるのだろう。彼女も、あの列に混じっているはずだ。柱の陰に隠れて微かに乱れた息を整えてから、ライラはまた足を進める。
 丁度いいタイミングで、彼女が現れた。とくん、と鼓動が一際大きく跳ねる。すぐにライラは彼女に駆け寄っていった。
「アーシュ!」
 その精悍な顔つきがライラを目にしてはっとなる。彼女はその場で立ち止まりドレスの裾を持ち上げて丁寧にお辞儀をした。
「ライラ様、ごきげんよう。再びお目にかかれて嬉しいですわ」
 彼女の声は心なしか固い。当然のことだ。ライラは微かに痛む胸を抑えて同じくお辞儀を返した。
「ごきげんよう。私もまたあなたに会えて本当に嬉しいわ」
 常套句のようだが、本心であった。しかし彼女――アーシュの方がそう思ってくれているかはわからない。
 ライラはじっと彼女を見上げる。首筋に掛かる程度に切り揃えられた髪は、淡い琥珀の色をしている。切れ長の瞳、目鼻筋がはっきりとした顔立ちは意志の強そうな彼女の雰囲気を醸し出しているようだ。佇まいも、ライラよりよっぽどキリリとしている。聞いたところによると彼女は両親が早々に亡くなってすぐに自分の国の君主となったということだった。現在齢十八とあまりライラとも離れていないようだが、明らかに面持ちは違う。
 とにかく彼女は、美しかった。思わずぼうっとその姿に見入ってしまうほど。
「あの、ライラ様……」
 黙り込んでいたからか、アーシュの方からおずおずと声を掛けてきた。
「わたくしはこれからお父様方と大事なお話がありまして……。お時間があるときに、また」
「待って」
 ぺこりと頭を下げて行ってしまおうとするアーシュの腕を掴んだ。
「な、何でしょう」
「屈みなさい。すぐに済むから」
 有無を言わさない口調で言う。彼女は困ったような顔になったが、素直に腰を屈める。ライラはそっと顔の位置に来た彼女の耳に、口を近づけた。
「……今夜も、私の部屋で待ってるわ」
 湿った吐息をたっぷり孕ませて囁く。びくっ、と彼女が微かに震えた。掴んでいた手首を離し、今度はその手をくすぐるように指を這わせていく。細く長い指の形を、一つ一つ確かめるように。彼女の体の部位で、好きな所の一つだった。
「……はい」
 アーシュは小さく頷き、それからまた会釈してから歩いていく。その背中が見えなくなるまで、ライラはじっと張り付くような視線を送っていた。

  †

 大陸で一番大きな王国。それがライラの住むこの国の通称である。住宅エリア、商業エリアと分かれるほど建物が建ち並ぶ広い城下町もさることながら、その中心に位置する城自体もかなりの大きさと外観の美しさを誇っており、ちょっとした名物にもなっている。現国王の愛娘であり、この国の姫君という立場のライラも、それらのことはやはり自慢だった。
 対するアーシュの統治する国は、大陸の片隅にあるような本当に小さな所であるらしい。今までは細々と自給自足を行っていたとのことだが近年になってその状況も厳しくなりつつあり、おそらくどこよりも豊かであろうライラの国に、物資の支援を申し入れに来たのは最近のこと。それが、アーシュが度々この城に足を運んでいる理由である。
「アーシュと申します。この度は国王殿にお願い事がありまして、我が国から参上いたしました」
 最初、謁見の間にて王座を前にそう言った彼女はとても凛々しかった。部屋の隅で密かにその様子を盗み見ていたライラは、あっという間に心を奪われてしまった。ああ、なんて美しい人なのだろう、と思った。
 何とか彼女と近づくことができないかと考え、その結果ライラは一番愚かであろう手段に出てしまった。自分と彼女の立場を、狡いやり方で利用することにしたのだ。
 ――バカだってことは、自分でも一番わかってるけど……。もう今更遅いわよね……。
 夜が更けてきていた。ドレスから寝間着であるネグリジェに着替えたライラは、自室のベッドの上に寝ころんで足をばたばたさせている。とっくに見慣れた天蓋の裏側を見つめながらため息をついた。
 アーシュはまだ来ない。毎度の如く支援に関する会議はそんなに話すことがあるのかと呆れるほど長く続くので、彼女は大抵この城に宿泊していくのだ。今頃、お供の従者たちが寝静まるのを待っているのかもしれない。きっと彼女はあてがわれた客室を抜け出して、もうすぐこの部屋にやってくるだろう。
「はぁ、落ち着かないわ……」
 ベッドから勢いよく起き上がった。気でも紛らわそうと日々の習慣である日記でもつけようかと、机に向かう。
「……あれ?」
 しかし机の引き出しの中に入れておいたはずの日記帳はどこにも見当たらなかった。書物と間違えて自分でどこかへ持ち出してしまったのだろうか。かなり赤裸々に書き綴った内容なので他人の目に触れるのは困る。
 探しに行こうかと迷っていると、不意に入り口がノックされた。ためらいがちに二回。アーシュに違いなかった。
「どうぞ」
 動揺を一瞬で呑み込んでライラは言った。すぐに扉が開く。
「失礼します、ライラ様……」
 ナイトガウンを着込んだアーシュがおずおずと部屋の中に入ってくる。聡明そうな顔には戸惑いの色が一杯に浮かんでいた。罪悪感と共に、密かな嗜虐心が芽生えるのをライラは自覚する。
「よく来てくれたわね、アーシュ。さあ、こっちに来て」
 こみ上げる笑みを押し殺しながら彼女の手を引いて部屋の真ん中へ導く。壁際に掛けられたランプの灯りがよく届く場所だった。
「さあ、それを脱いでみせて?」
 少し離れた距離から、ライラはアーシュの着ているナイトガウンを指さす。
「は、はい……」
 彼女はナイトガウンの襟に手を掛けたものの、そこから固まってしまう。焦れてしまったライラは、思わずその言葉を口にしてしまった。
「……いいの? あなたの国への支援を断るように、お父様に言いつけるわよ」
 胸を刺す苦み。これが、彼女に近づくための手段だった。何度この台詞を口にしたかわからない。そしてその度にひどく心が痛んだ。
 叱られた子供のように身を竦ませた彼女はナイトガウンをはだけさせ、脱ぎ捨てた。ライラは息を呑む。
 彼女は下に何も纏っていなかった。ランプの柔らかな光の中、すらりと伸びる四肢が、その染み一つない白い肌が浮かび上がっている。
 くびれて無駄な肉のない体に反して、上部にある二つの膨らみは大きく実っている。ぴたりと合わせた足の間、恥丘には髪と同じ鮮やかな色をした繊毛が濃く茂っていた。
 大人の身体だ……とライラは生唾を呑み下し、それからアーシュに歩み寄った。
「あっ……ライラ様……」
 剥きだしの裸体にそっと手を添えると、彼女の吐息が漏れた。指先に吸い付くような瑞々しい感触。胸の中で鼓動がはちきれそうになる。
「さあアーシュ、遊びましょう……?」
 そう囁いてライラは、彼女をベッドへと連れ込むのだった。

  †

「んっ……」
 ベッドの上に転がしたアーシュの身体に折り重なり、ライラはその小さな手を滑らせていく。彼女はぎゅっと目を閉じて、くすぐったさに耐えるようにしていた。
 ――少しでも逆らえば、支援の件は泡と消えてしまう。そんなことを、彼女は考えているのだろうか。そう思うと歯がゆくなってくる。
「ラ、ライラ様……」
 お腹の表面に口をつけ、軽く吸う。それから舌で円を書くように舐った。脇腹、太股、首もと、肩と、全身を余すことなく味わっていく。ほっそりとしているのに、どうしてこんなに彼女は柔らかいのだろうとライラはうっとりした。
「ねえアーシュ、どう……? 気持ちよくなってきた?」
 アーシュの耳朶を甘噛みしつつライラは囁く。
「は、はい……気持ち、いいです……」
 上擦った声、仄かに色づき始めた肌。ちゃんと彼女は感じてくれているようだった。思わず綻びそうになった表情を引き締め、ライラは急に彼女の乳房を掴んだ。
「あっ、ん……っ」
「そろそろここも、触ってほしかったでしょう?」
 軽く力を込めて揉みしだく。あまりのしなやかさに埋めた指がそのまま沈んでいきそうだ。手のひらに、とくとくの脈打つ熱が伝わってくる。頭がくらくらしてきた。
「本当に……いやらしい身体ね。こんなに大きな膨らみを二つも実らせて」
「ご、ごめんなさ……っ」
「ここもこんなに尖らせるなんて……ほんと淫らだわ……」
「んはぁっ……!」
 親指で胸の先にもたげていた突起を転がしてやる。もう芽吹いてしまっているようだ。間髪入れずにライラはそれを口に含んでやった。
「やぁ、んん……っ、ライラ様……っ!」
 身を捩るアーシュ。舌先でくすぐる度に過敏な反応を示す。それを必死に押し殺そうとしている姿に、興奮を覚えずにはいられない。
 ――さて、そろそろいいかしら。
 散々胸を弄んでから、アーシュがぼんやりしているのをいいことにライラは彼女の足の間に身体を滑り込ませた。
「ふふ、アーシュのここ、もう生え揃っているのね。髪と同じ綺麗な色で、とても素敵よ」
 下腹部の丘に茂っている繊毛を撫で回す。範囲は狭いが肌が隠れるほどに密集した草原。大人の証だ、とライラは愛でるように指で梳いてやる。羽毛のようにふわふわした感触が癖になりそうだった。
 それから更に身体をずらし、立てたアーシュの膝を大きく開いた。股ぐらを正面からのぞき込むような形だ。
「あっ、そこはダメです……」
 今更彼女は足を閉じようとするも、既に間にライラは潜り込んでしまっていた。じっと目の前にある秘部に視線を注ぐ。
 性毛の下、二枚の充血した花びらはうっすらと開き溢れだした蜜で生々しく光っていた。指を添えて広げてやると透明な糸が引き真っ赤な果肉が現れる。既に中までぐっしょりと濡れそぼり、まるで鼓動するかのようにひくひくと蠢いている。普段気品のある彼女の体とは思えないほど淫靡な光景に、ライラは体が途方もなく疼き出すのを感じた。
「見ないで……ください……っ」
 顔を覆ってアーシュが囁いた。恥じらうその姿がもっと衝動を突き動かす。ライラは彼女の秘裂にかぶりつき、音を立てて吸い上げてやった。
「ひっ……! いやぁ、あぁ……っ!」
 激しく彼女の体が打ち震える。甘酸っぱい香りが鼻腔に、そして口の中にも広がっていく。粘膜を濡らす蜜を全て舐り取ってしまおうと夢中で舌を動かした。
「んあっ、ダメっ! あっ、ライラ……さまぁっ!」
 アーシュはベッドのシーツを強く握りしめて悶えている。舐めとっているはずなのにさっきより蜜の量は多くなってきていた。白く白濁した粘液まで、蜜口からこぼれ落ちてくる。
 彼女は本気で感じてくれているのだ。そのことが嬉しくて、ライラはもっと彼女を責め立てていく。
「ひゃうっ……! そこ、はぁ……っ!」
 合わせ目の上、包皮から小さく顔を出した肉芽を指でくすぐると彼女が跳び上がるようにのけぞった。赤く膨らんでぴんと屹立している。敏感すぎるそこを軽く弾くようにしながら、ライラは唇で潤んだ肉襞を挟んでしごき立てた。
「もっ……だめぇっ……ライラ様っ、ライラ、さまぁっ!」
 やがて立て続けにアーシュは体を震わせた。ぴくんぴくんと細やかに痙攣している。どうやら達してしまったようだ。
「……アーシュ……」
 ライラは荒く息を吐いて目を閉じているアーシュの顔に、自分の顔を近づけていく。
 キスしたい。彼女の唇に、私の唇で触れたい。一体そんなことを何度願ったことだろう。
 しかし自分は彼女を脅し、無理矢理体を重ねているにすぎないのだ。罪悪感が胸に蘇る。唇の距離が間近に迫ったところでライラは止まり、それからゆっくり離れていこうとする。
 ふと、アーシュの目が開いた。
「んんっ!?」
 その瞬間首筋に回ってきた彼女の腕に抱き寄せられ、唇を奪われた。驚いて開いた口に彼女の舌がねじ込まれる。信じられなかった。舌は荒々しくライラの口内を侵し肉切れのように薄い舌を絡めとる。ライラは目を見開いたまま固まって、抗うこともできなかった。
 キスをしながら、アーシュは身を翻すようにして今度はライラをベッドに押しつけた。急激な状況変化に、完全に置いて行かれてしまっている。
「ライラ様。いかがです、わたくしとのキスは?」
 不敵に微笑んだ彼女が見下ろしてくる。今までとまったく違う雰囲気に、ライラは唖然とするほかない。
「ア、アーシュ……?」
「びっくりさせてしまいましたか? ごめんなさい、もう我慢できなかったんです。貴女の気持ちを、知ってしまったので」
「き、気持ちって何?」
「実は日中ライラ様が留守の間に、この部屋にあった日記を、拝借させていただきました」
 ライラは愕然とした。どうせ誰の目にも触れないからと、日記には自分の想いをありのままに書き綴っていたのだ。もちろん、アーシュに対してひた隠しにしてきた、燃え滾るような気持ちも。
「わたくしのことが好きなのでしたら、こんな回りくどいことせずに普通に言っていただいたらよかったのに」
「そ、そんなこと……」
「あら、まだ素直になっていただけないんですか」
 不意にアーシュの手がライラのネグリジェに掛かり、ボタンを引きちぎって前を大きくはだけさせた。
「わっ! ちょっと何するのよ!」
「何って、先ほどのお返しです。それに、体に聞いてみた方が早そうですし」
「体って……あっ、何して……っ!」
 アーシュの手が、むき出されたライラのなだらかな胸を掴んできた。強めに揉み込まれ、少しの痛みとそれ以上の痺れが体に走る。
「んっ……! やめてっ……!」
「やめてほしいんですか? まだ嘘をつくおつもりですか」
 ぷくりと膨らんでいた小振りな乳首が、アーシュの口に含まれた。生温かい感触に肌が粟立つ。更に舌で弾かれちゅるっ、ちゅっ、と音を立てて吸いたてられて、体が勝手に浮き上がってしまう。
「やだぁ……っ、あぁっ!」
「ライラ様の感度もいいですね。……ひょっとして、私のことを考えてお一人で?」
「違っ……! 違ぁっ……」
 図星を突かれ、答えに窮するライラ。それに気づいたらしくアーシュは微笑んだ。
「嬉しいです。……わたくしもライラ様と会える日を待ち焦がれて、ずっと自分を慰めていましたから」
 ――アーシュも……?
 どきりとする。しかし断続的に続く胸への刺激のせいで、上手く言葉の意味が捉えられない。
「では、そろそろこちらも……」
 先ほどのライラと同じようにアーシュが下へと体を滑らせ、下腹部のところに頭が来たところで止まった。少女の園を隠していた布切れの端に指をかけ、足を通して下ろしていく。つうっ、と細く何本か、蜜が糸を引いていった。
「やあっ……だめっ……!」
「大丈夫……今度は私に見せてください……」
 下着を脱がされ慌てて足を閉じようとするが、アーシュの手でこじ開けられてしまう。彼女の眼下に、完全にライラの少女器官は晒された。
「わあ……想像していた通り、とても綺麗な花弁ですわ……」
 指を添えられて亀裂を広げられる。アーシュの微かな吐息と熱い視線を感じ、ライラは声を漏らしそうになった。
「ふふ、とても濡れてらっしゃいますね……。薄くて可愛らしい花びらも、中の粘膜も綺麗なピンク色で、とろけてしまっていますわ……。ああ……甘酸っぱい香り……」
「い、言わないで……っ」
 思わず顔を逸らすライラ。しかしその瞬間に、強烈な痺れが体を打ち震わせた。アーシュがライラの秘裂に舌を這わせたのだ。生温く柔らかな感触に優しく舐られ、ライラは目を見開いて背をのけぞらせた。
「いやぁっ! そん、なぁ……っ!」
「ライラ様のここ、とても美味しい……」
 ぺちゃ、ぴちゃ、と猥褻な音が響く。もう何も考えられず、ただ流れてくる快楽に身を任せるほかなかった。
「ライラ様のお口……とても物欲しそうにぱくぱくしてますわ……。こちらも、よろしいですよね?」
 ふと秘口に指があてがわれるのがわかった。ライラは体を起こそうとする。
「待って、やめ……っ!」
 その瞬間、一気に貫かれた。声にならない悲鳴がライラの喉を揺らした。
「やはりここも、ご自分でいじってらしたのね……。すごい……指が溶けちゃいそう……」
「あっ、あっ、アーシュ……っ!」
 初めて受け入れた自分以外の指。彼女のそれが今膣襞を擦り上げている。切なさにも似た鋭い感覚がびりびりと走る。
「ライラ様……」
 指で膣膜を抉りながら、ふとアーシュが体を持ち上げ顔を近づけてきた。開きっぱなしのライラの口を唇で塞ぎ、口の中まで舌先で侵してくる。
「んむっ、んふっ……」
「ライラ様、わたくしと結婚いたしましょう……?」
 キスの合間に彼女は突然そう言ってきた。
「わたくしの国では、同性結婚も認められているのです……。もし結婚したら、わたくしたちはもう、ずっと一緒にいられますわ……」
結婚……。その単語にライラは戸惑いつつも、甘美な響きを覚えずにはいられない。
 アーシュとずっと一緒にいられる。何の後ろめたさも隔たりもなく。全身が甘い痺れが走った。
アーシュは再び唇を塞いでくる。更にライラを穿つ指の動きを再開させ、空いている方の手で乳房まで刺激してきた。一気に責め立てる愛撫に、ついにライラは限界を迎える。
「んぐっ、んふぁっ、んああぁっ……!」
 膨らみきった快楽が破裂し、全身を凄まじい勢いで駆け巡っていく。思考さえも白い波に呑まれて訳も分からずライラは震え続けた。頼りなく痙攣しているその体を、アーシュは全て受け入れるようにぎゅっと抱きとめてくれていた。
「ライラ様。お返事、お聞かせ願えますか……?」
 柔らかな胸に頭を預けて荒く息を吐いていると、アーシュがそっと問いかけてくる。
 まだぼんやりとしている意識の中で、ライラは小さく口を開いた。
「うん……アーシュと、一緒にいさせて……?」
 ライラは甘えるように彼女に身を寄せる。アーシュは優しくそれを包み込んでくれていた。
「一生可愛がってあげますわ……ライラ」
 呟いた彼女がにやりと陰のある笑みを浮かべたのに、ライラは気づかなかった。



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